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労務関連統計の指標と2025年に向けた政府の施策

マレーシア統計局(DOSM)は2024年12月10日、民間および公共セクターのフルタイム労働者が受け取る月収の統計2023年版を発表しました。今回はその概要と、政府が25年に導入を予定するいくつかの重要な労務関連制度についての概要と実務的な影響を見ていきます。


1.給与の増加率は前向きな兆候


統計によると、23年の平均月額給与は前年比6.9%増加となっており、新型コロナ禍前の成長率と同等のレベルを達成したとしています。11月に発表されたマレーシア雇用主連盟(MEF)の統計では24年の平均月額給与増加率は4.9%程度で、人材紹介会社の発表するデータ等も参照すると、24 年は 5%程度の増加率であったことが読み取れます。


平均月額給与と増加率の推移(2010~23年)
平均月額給与と増加率の推移(2010~23年):統計局資料より作成

2. 25年に導入予定の労務関連制度


25年にはいくつかの重要な労務関連制度が導入される予定であり、企業の全体的な労務コストを増加させる要因になることが想定されます。


(a) 最低賃金の導入

最低賃金が25年2月以降、1,500リンギから1,700リンギに引き上げられます。従業員数が5人未満の企業は、25年8月まで6ヶ月の猶予期間があります。2024年は漸進的賃金制度(PWP:Progressive Wage Policy)が試験的に導入され、政府は主要役職ごとの賃金レベル指標についても随時整備を進めていく予定です。


(a)   外国人の従業員積立基金(EPF: Employees Provident Fund)への加入

年金制度となるEPFは現在、マレーシア人労働者と希望する外国人労働者が加入し、雇用者12%もしくは13%、労働者11%をそれぞれ負担しています。25年には外国人従業員について拠出義務が導入される予定で、マレーシア人と同程度になるまで段階的に引き上げられる予定です。


(b)   多段階人頭税制度(MTLM)の導入

外国人労働者の雇用人数に応じて税を重くする多段階人頭税制度(MTLM)が25年当初より導入される予定です。政府は製造業におけるマレーシア人労働者と外国人労働者の雇用比率を80:20にすることを推進していましたが、これをMTLMの導入まで延期するとしています。


上記はいずれも政府が企業に対し外国人への依存を減らし、マレーシア人および自動化を中心とする生産プロセスの近代化への投資を間接的に要請していることが読み取れます。統計局の数字からは、高スキルの賃金上昇は前年比7.46%増と堅調なのに対し、中スキル層は6%増と伸び悩んでおり、政府は中スキル以下の労働人口の全体的なスキルアップにも注力していくものと思われます。


3.     労務関連の税制インセンティブ


25年税制改正では下記のような労務関連のインセンティブが導入もしくは拡充されます。いずれも控除にあたっては人的資源省管轄のTalent Corporationマレーシア(Talent Corp) への事前申請が必要です。家庭の事情等、なかなかフルタイムで働くことが難しかった労働人口層を取り込みたいとする政府の意図が読み取れます。


労務関連の税制インセンティブ
労務関連の税制インセンティブ

4. 企業の持続可能な成長に向けた戦略が必要


政府は雇用主に義務とインセンティブの両方を導入し、マレーシア人を中心とする労働人口の裾野を広げ、全体的なスキルアップと、高付加価値製品・サービスを生み出す産業への転換を暗に要請しています。一方で、企業にとってはこれらの変更による長期的なコスト増は短期的なインセンティブのメリットを上回る可能性があり、持続可能な運営に関する検討が求められます。

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