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雇用法(Employment Act 1955)

 雇用法は、原則として、給与が2,000リンギ以下の労働者が対象になります。2,000リンギは、新卒の最低基本給の平均レベルですので、実務上、多くの労働者は本雇用法の適用をうけないことになります。非対象者の場合、会社が独自に規定する、雇用契約や就業規則が優先されます。しかしながら、多くの企業が本雇用法をベースに就業規則や雇用契約を作成しているため、雇用法を理解する事は非常に重要です。

   ・ 「成文法」と「慣習法」
マレーシアでは、雇用法に明記されている「成文法」と、判例などにより判断する「慣習法」により構成されています。労働裁判の判決は慣習法にそって下されることが多く、数々の労働問題に対応するためには、慣習法(判例)を調べることが重要となります。

雇用法上の主な規定

01/

雇用条件

労働時間  :一日8時間、週48時間以内


賃金   :基本給およびその他の手当を含む。賃金は1ヶ月に最低1回以上支払わなくてはならない
              賃金計算期間の最終日から7日以内に支払われなくてはならない
              最低賃金は57地域で月額1,200リンギ(2020年最低賃金令)


手当等      :住宅手当、食事手当、通信費・燃料費手当(営業など)などがあり、役職などに応じて個々に設定する

      健康保険制度がないため、一定額を上限として、医療手当を支給する会社が多い

時間外手当 :残業は、1日4時間、月104時間を超えてはならない
                                 平日の場合は時給1.5倍以上、休日の場合は時給の2倍以上、祝日の場合は時給の3倍以上

                                 祝日出勤の場合、2日分の給与を支給

賞与             :雇用法上、支給義務はないものの、多くの企業が、一か月分の給与程度の賞与を支給している

退職金        :自主退職や定年退職などの事由により雇用契約が終了した場合、解雇手当を支払う必要はない

                             雇用契約書や就業規則上で、会社が独自に決める場合が多い。

02/

社会保険制度

下記の3種類の社会保険がある

1.従業員積立基金(EPF: Employees Provident Fund):

 いわゆる年金制度で、就労期間をとおして積立てし、退職時に元本と利子相当分を受け取る。日本の年金制度と異なり、若い世代が負担するのではなく、自身が納付した金額を受け取ることができる。保険料率は、雇用者12% または13%、労働者11% または9%をそれぞれ負担

2.従業員社会保障制度(SOCSO:Social Security Organization):

    いわゆる労災給付制度で、従業員が勤務中もしくは通勤などで発生した傷病に対しする保障。
    保険料率は、雇用者負担1.75%、労働者0.5%をそれぞれ負担。拠出額には上限があり、月給4,000リンギを超える場合、雇用者負担69.05リンギ、被雇用者負担19.75リンギ


3.雇用保険制度(EIS:Employment Insurance System):

 いわゆる失業保険で、雇用者と労働者が0.2%程度をそれぞれ負担する

 

日本人(外国人)加入の要否:
 上記の保険制度のうち、外国人にも加入義務があるのは、2のSOCSOである。負担率は1.25%で、月給4,000リンギを超える場合、49.40リンギが拠出上限となる。

 1のEPFについては、会社側が加入を認める場合に、外国人も任意で加入することができる。加入している外国人が帰任することとなった場合、その時点まで積み立てた元本と利子を受け取ることができる。
 社会保険の国際的な動きとして、例えば日本と海外の社会保障制度に二重加入することとなった場合、いくつかの国々は二国間で「社会保障協定」 を締結しており、この場合は原則として、就労する国の社会保障制度のみに加入し、二重納付を防ぐことができる。しかしながら、マレーシアはまだこの協定には加盟していない。
 マレーシアには日本で言うところの「健康保険」制度がないため、医療費は個人で負担することになる。赴任者の場合、長期海外旅行保険など予め日本で加入してから赴任することも多いものの、現地スタッフに対しても会社が民間の保険に加入させることも一般的になっており、現地スタッフと合わせて現地でかけられる保険もある

日本人(海外赴任者)の海外赴任中における日本の社会保険についてはこちら......Read more.
 

03/

就業規則

法令上の要請ではないものの、多くの会社は下記の事項を盛り込んだハンドブックを作成する。

      
雇用条件等:採用、雇用形態、試用期間、労働時間、給与・賞与・時間外手当・各種手当、休暇・祝日、保険、解雇、退職金、転籍・異動、健康診断、秘密保持など

方針・手続き:服務規律、研修、旅費、人事評価、懲戒、休暇取得など

04/

解雇

解雇はその原因によって、普通解雇、懲戒解雇、整理解雇に分かれる


1.普通解雇: 

整理解雇、懲戒解雇以外の解雇を言い、勤務態度が悪いなど従業員の側に解雇事由がある場合に行われる解雇などを含む
 

2.懲戒解雇

重大な不正行為などが原因となり、会社が従業員に対する懲戒の手段として解雇することを言う。紛争になる場合も多いため、会社は不正行為の内部調査など、事前段階での適切な措置を求められる
 

3.整理解雇:会社都合によりなされる余剰人員の削減


 解雇の手続きについては、法律上は、比較的、会社主導で行えるように記載されているが、紛争になった際に負けないためには、判例などの慣習を参考にして、どのように対応すれば正当な理由に基づく解雇とみなされるかを検討して行う必要がある

05/

​就労ビザ

 現地で働くために必要なVISA、労働許可等:
 マレーシアは、外国人駐在員のほか単純労働者の受け入れ国でもある。就労許可証は、低技能労働者向けの「労働許可証(Work Permit)」、高技能労働者向けの「雇用許可証(Employment Pass=EP)」、「専門家向け訪問ビザ(Professional Visit Pass)」があり、マレーシアで働く外国人労働者のうち、低技能労働者が約98%と言われている

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駐在員・現地採用の日本人か取得する就労ビザ:
 駐在員、現地採用の日本人が取得するものは雇用許可証(Employment Pass:EP)になり、下記の3つのカテゴリーに分かれる。
① 企業幹部クラス(Expatriate, Category I)
② 専門職クラス(Expatriate, Category II)
③ 一般職クラス(Knowledge/Skilled Worker, Category III)

 期間については、審査により決定される。

 就労ビザは会社のスポンサーの下で取得し、申請にあたってはまず会社登録が必要で、資本金要件も定められている(外資製造業で50万リンギ、外資サービス業で100万リンギ以上など)。就労ビザ取得の難易度は上がっており、現地社員で代替可能な役職については、まず政府の求人サイトで応募を募る必要がある。

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