コロナ禍でのクロスボーダー役務提供の税務におけるポイント
企業グループ内もしくは親・子会社間で商品の売買や役務の提供を行うことがありますが、税務上「関連会社間取引」と呼ばれるこのような取引は、税務調査などにおいてよく議論にあがってくるトピックの一つです。国境を越えた「ヒト」の移動が制限されているコロナ禍においては、特にクロスボーダー役務の提供のあり方が変わってきていると思いますが、今回はその税務上の留意点についてまとめます。 役務提供の対価性(費用性) 現地法人が親会社やグループ会社から提供を受ける役務には、例えば技術指導や営業サポート、財務や人事などの管理業務のシェアードサービスなどがあります。このような役務の提供に関し、税務調査では「いくらチャージするのか適当 か」という論点もさることながら、その役務を受ける現地法人側において、そもそも「その対価性(費用性)が適当か」という指摘もあります。税務調査においては、その対価性を証明するためにその活動内容や報告書などの成果物を残しておく必要がありますが、国境を越えた移動が制限される中では、契約書などに規定している役務の提供が必ずしも行えていない場合があるかと思います。このような取引がある企業は、その役務がコロナ禍でも同じ内容で継続して提供されているか、また提供の方法が変わっている場合は、成果物の残し方などについて再度検討する必要があります。 役務提供の請求額 日本の親会社の社員が現地法人に出張しサポートを行うケースなどにおいて、その請求額のベースになるものは、出張する社員の人件費やかかる経費(航空券や宿泊など)になるかと思います。税務当局は、このような役務の提供については、人件費や直接経費だけでなく、間接費(販管費など)や、その役務を第三者に提供する場合と同様に利益も乗せるべきと指摘する場合もありますが、コロナ禍で役務の提供方法がリモートなどに変わる場合、現状の請求額が適正かを見直す必要があります。 With/Afterコロナにおいて、「ヒト」の働き方や動き方が変わり、それは企業グループ内の取引図にも少なからず影響を与えていると思います。現地法人側はこのような役務の提供を受ける場合が多いため、税務調査で指摘されることのないよう、グループ会社間取引の運用ルールなどの見直しは必要に応じて実施されることをお勧めいたします。