ニューノーマル期の福利厚生と税務
コロナ禍で企業は働き方の変化への対応を迫られています。リモートワークが求められる中、企業は従業員の働き方をより細かく把握しつつも柔軟に対応する必要があります。従業員のリモートワーク環境のサポートや、リモートでもモチベーションを失わせないようにする福利厚生のあり方も変化せざるを得ないかと思いますが、今回は福利厚生を税務の視点から考察します。 リモートワークの普及で変化する福利厚生 福利厚生とは、企業が従業員に提供する賃金以外の報酬のことで、マレーシアのEPF(年金)、Socso(労災補償)/EIS(雇用保険)のような「法定」福利厚生と、それ以外のものに分かれます。「法定」福利厚生は加入する義務があり、法定外の福利厚生は、従業員の生活の質を向上させ、それにより従業員の仕事に対するやる気を引き出し人材の定着を図るために企業が選択して与えるものです。マレーシア人も、福利厚生の充実度を就職時の重要な判断基準としている人も多いという印象です。 マレーシアも他のASEAN諸国と同様、福利厚生といえば社内旅行や食事会など皆で行うイベントが好まれる傾向にありましたが、コロナ禍ではそれも行えなくなり、代わりに企業はリモートワークに向けたPCやネット環境、情報セキュリティの整備、公共交通機関の利用を心配する営業スタッフへの社用車の支給、従業員の家族を含めた健康・精神面の配慮など、福利厚生のあり方も変える必要がでてきています。 福利厚生と税制 福利厚生は従業員の経済的利益となるため、税務上は給与と同じく課税対象になるのが基本です。しかしながら、現物支給されているものも所得として課税されてしまうと本人の給与手取り額が減少するなど逆効果になることもあるため、一定の福利厚生については免税枠を設けています。下記の表にあるように、マレーシアは他国と比較しても、福利厚生に対し柔軟な税制が設けられていると思います。企業が様々なオプションから福利厚生を選択する際、なるべく税のかからない組み合わせで行えば、企業にも従業員にもメリットのあるものになります。尚、下記の免税枠は取締役や株主など会社をコントロールする立場の人には適用されません。 上記のほか、短期経済回復計画(PENJANA)では、会社が従業員にPCや携帯端末の支給した場合に5,000リンギまでの個人所得税の所得控除を与えるほか、企業がフレキシブル・ワーク・アレンジメント(FWAs)を推進するために支出した費用に対し税のインセンティブを与えるとしており、現在詳細が検討されています。企業の中には、将来的に生活がもとに戻ったとしてもある程度の規模でリモートワークを継続していくと表明しているところもあります。経営者はニューノーマルの時代の動きに対応した最適な福利厚生について、従業員目線で考える必要があります。