数字で見せるSDGs
SDGs(Sustainable Development Goals: 持続可能な開発目標)について、多くの企業がその取り組みについて発信しています。まだ大企業が中心で、中小企業や現地法人にとっては日常の業務とは遠い印象もあるかとは思いますが、実利的なところで言えば、例えば入札や提案時に提案事項のSDGsへのインパクトについて記載する(魅力的な提案になる)、M&Aの買収候補先にSDGsへの配慮を求め、デューデリジェンス時にSDGsを項目に入れるケースも見られます。また、大企業のサプライチェーンに組み込まれている企業は、その一員としてSDGsの達成に向けた貢献への協力が必要になることも想定されます。 1.SDGsは企業経営における身近な課題 SDGsは17項目で構成されており、「貧困や飢餓をなくす」など大枠の目標が掲げられていますが、企業がそれをどう経営に細かく落とし込むかについてはSDGコンパス(SDGsの企業行動指針)でそのステップが提供され、産業別の手引書も作成されています。 手引書を読むと、「2.優先課題を決定する」に関しては、企業が普段から取り組んでいる「改善活動」と重なる部分が多くあります。途上国を含む海外の現地法人は、よりESG~環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)~項目への取り組みが求められるところです。普段の取り組みをSDGsの課題として設定する場合、その進捗状況を財務やその他の数値で継続して見せられるようにしておくとよいと思います。 2. 発信することの重要性 最近では、企業が有価証券報告書(監査報告書)に加えて、統合報告書を発行することが浸透してきています。有価証券報告書が「過去の結果報告」であるとすれば、統合報告書は「現在と未来、経営者の覚悟」を記載するもので、投資家や従業員、消費者などがその企業の目指す方向や社会的責任への取り組みを読むことができます。 多くの統合報告書には企業のSDGsへの取り組みも盛り込まれていますが、方針から具体的な事業への反映の仕方まで財務データと非財務データのバランスが取れた開示を継続して行うことができれば、やがて企業価値を高めるツールにもなりえます。今は、日本本社よりも大きな規模で運営している現地法人も多い中、統合報告書でなくとも、ホームページやパンフレットなどで現地でのSDGsの取り組みを発信していくことも重要な時期に来ています。 3. 継続は力なり コロナの影響を受けた企業の決算の数値がほぼ出そろいました。今決算では、財務データからコロナの影響を受けた数値を切り抜いて、経営陣や株主、税務当局など異なるステークホルダーに対して説明ができるよう、また過年度との比較ができるよう財務データの「見せ方」を考慮した企業も多かったのではないかと思います。 SDGsに関しても異なるステークホルダーに対し、自社がどのように価値を創造していくのかを継続して説得力のある数字で見せていくことが重要です。それには日ごろの経営にSDGsの「意識」を取り入れることであり、我々も会計のプロとしてその実務的な一翼を担うことができれば幸いです。