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海外赴任者と日本の社会保険制度

日本から海外に赴任する方(海外赴任者)が、赴任時、赴任中、帰任時において、検討および手続きを行うべき日本の社会保険についてご説明します。 1.赴任時  会社に勤務するサラリーマンの場合、日本の社会保険制度は以下のような体系となっています。  海外赴任者の日本での社会保険・労働保険資格については、主に、「日本企業との雇用関係(=日本企業との雇用関係が継続しているか)」、および「日本企業からの給与の支払い」の状況に応じ、その資格が継続されるかどうかを判断することになります。 健康保険や厚生年金保険を喪失しないためには、在籍出向であることと、一定の日本での給与を残すことが望まれます。また、労災保険については、海外赴任中は原則として適用対象外となりますが、「特別加入」の制度があり、一定の条件のもとで海外赴任者も加入することが可能です。  赴任先の国では独自の公的年金制度があり、加入を求められるケースがあります。この場合、日本と現地国の両方の公的年金制度に対して、二重に保険料を支払うことを余儀なくされてしまいます。 また、現地国の公的年金制度に加入したとしても、加入期間が比較的短期間になるため受給資格を得ることができず、現地国で負担した保険料は多くの場合掛け捨てになってしまいます。   これらの問題を解決するために、以下の2つを主な内容とした「社会保障協定」が、国家間で締結されている場合があります。 保険料の二重負担を防止するために、加入するべき制度を二国間で調整する(二重加入の防止) 保険料の掛け捨てとならないために、日本の年金加入期間を、協定を結んでいる国の年金制度に加入していた期間とみなして取り扱い、その国の年金を受給できるようにする(年金加入期間の通算)  日本年金機構によると、2021年6月時点において、23ヶ国と協定を署名済で、うち20ヶ国分は発効していますが、残念ながらマレーシアを含むASEAN加盟国との協定はまだ進んでいない状況です。 2.赴任中  海外赴任者の日本での社会保険・労働保険資格については、一般的に日本企業から基本給などが支払われていれば資格は継続し、一部手当のみの支払いであれば、喪失させることが多いですが、実務上の取扱いについては、保険者(年金事務所、健康保険組合等)に確認を行うことになります。  各保険項目について、日本で行っておくべき社会保険手続きは下記になります。  健康保険料について、資格継続時の標準報酬月額の算定にあたっては、適用事業所(日本本社)の給与規定や出向規定により、実質的に適用事業所から支払われていることが確認できる場合は合算し、一方で、これらの規定に海外赴任者に関する定めがなく、海外事業所における労働の対象として、直接、海外の事業所から本人へ支給される場合などは、合算しないケースがあります。実務的には、個別に年金事務所等に確認を行うことになります。  また、労災保険に特別加入を行っている場合、毎年、年度更新手続きが必要になるなど、赴任中においても手続きが必要なものがありますので、手続き漏れがないよう留意が必要となります。 3.帰任時  帰任が決まりましたら、①イミグレーションオフィスへ雇用パス(EP)やプロフェッショナルビジットパス(PvP)など滞在ビザのキャンセルを行い、②税務署に対しては、帰国届(Form CP21)を提出します。これは帰任の一ヶ月ほど前に行います。これには、赴任日から帰国予定日迄の出入国チェック(パスポートコピー提出)や帰国予定日までの個人所得税の精算および納付(タックスクリアランス)が含まれます。この報告を怠った雇用者には罰則規定が設けられておりますので注意が必要です。  日本側では、会社は帰任に伴う給与額の調整などを行うほか、社会保険については、海外赴任中、喪失していた労災保険につき、特別加入の手続きを行っていた場合には、「海外特別加入に関する変更届」を提出します。介護保険については、海外赴任中は一定の例外を除き保険料は発生しないこととなっていますので、海外から帰任した40歳以上65歳未満の健康保険の被保険者は、速やかに「介護保険適用除外非該当届」を提出する必要があります。    多くの日系企業が海外への投資を進めていく中、海外赴任者の数も増え続けていますが、それに伴い、海外赴任者の処遇について会社が考慮しなければならない事項も増えています。一方で、大企業や海外拠点の多い企業は、海外赴任規定に基づき赴任者への統一的な取り扱いを行っていますが、まだまだ場当たり的な対応をしている会社も多く見られます。赴任者自身も基本的な流れを理解し、日本で働いていた時と比べて不利な雇用条件・環境になることなく、海外事業を切り開いていただきたいと思います。

海外赴任者と日本の社会保険制度
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