Finance Bill 2024(税制改正法案)
2025 年政府予算案の内容を法制化する税制改正法案(Finance Bill 2024)が11月19日、議会に提出され、1回目の審議に入りました。今回は本法案のうち重要なポイントをまとめます。 1.個人所得税:個人が受領する配当に対する課税(25年賦課年度より導入) マレーシア法人の個人株主が、年間10万リンギを超える配当を受領した場合、その配当収入に対し2%の税率で課税されます。この導入に伴い、配当を行うマレーシア法人は、配当の際に以下の事項を記載した配当証明を株主に交付する必要があります。 (a) 配当金の額、および (b) 支払金額、または配当金が金銭以外の現物支給である場合、配当時のその現物 の公正価値の額 海外法人からの配当収入については除かれます。配当を受領する個人株主がマレーシアにおける居住者である場合は、確定申告に配当収入を含めて税額を計算することになります。非居住者が受領する配当金についてどのように納税するかの具体的な記載はまだなく、今後のガイドライン等で規定されることになります。 2.税務行政(25年1月以降導入予定) 本法案では、マレーシアの税制における透明性、コンプライアンスを強化するための法案が多く見られます。 (1) 納税者番号(Tax Identification Number:TIN)へのアクセス 22 年の税制改正で、法人および18歳以上の全マレーシア人に対するTINの取得義務が導入されました。TINは所得税や印紙税等の申告納税に使われますが、今年導入された電子請求書制度(e-Invoice)にも使用されます。これを受けて、納税者が取引先等のTINを参照できるようなプラットフォームが構築されます。 (2) 印紙税、不動産利得税(RPGT)に関する自主申告・電子申告制度の導入 現在、印紙税、RPGTは申告後に税務当局の査定により税額が確定していますが、今後は納税者による自主申告方式になり、電子申告のみに統一されます。これにより、これまで査定に時間を要していた部分が短縮されますが、自主申告になることで後に税務調査を受ける可能性が生まれます。 (3) 不正確な申告書等の提出によるペナルティー 租税条約等に基づく他国の税務当局との情報交換により、納税者が不正確な申告を行っていたことが判明した場合、現状では訴追によりペナルティーが科されますが、今後は訴追がない場合でも税務当局は納税者に通知することで、2万~10万リンギのペナルティーを科す場合があります。 3.全体として課税強化の方向 本法案では、上記のほかにキャピタルゲイン税やラブアン税制等にも細かな改正点が提案されています。全体像としてはこの数年で導入してきた課税ベースの拡大や納税インフラの整備を背景に、課税強化に進む方向性を打ち出した内容になっていることが読み取れます。実務面では、机上、実地を問わず税務調査も増えており、納税者は日頃から税務コンプライアンスにも留意しつつ運営や判断を行うことが重要と考えます。