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移転価格税制の税務調査要領に関するアップデート

  • 執筆者の写真: Michiyo Okubo
    Michiyo Okubo
  • 8月31日
  • 読了時間: 3分

内国歳入庁(LHDN)は7月、移転価格税制の税務調査要領のアップデートを公表しました。昨年12 月に移転価格税制の新たなガイドラインが公表されましたが、本要領はこのガイドラインの順守を徹底するための罰則等を明確化するものになります。今回は、移転価格調査の概要と順守しない場合の罰則等について見ていきます。


1.移転価格調査の概要


移転価格調査は通常、6賦課年度に遡って行われます。不正等の申告が認められた場合はさらに調査対象期間が延長される場合があります。調査対象企業の選定について、ガイドラインによると、納税者の関連者間取引のリスク評価(関連会社との取引規模が大きい)や企業グループの事業再編、第三者から入手した情報、および外国の税務当局との情報交換を参照する、としていますが、実務的には複数年度の損失計上や特定の関連者間取引(ロイヤルティーやマネージメントフィーの過大な支払い)がある場合に選定されやすい傾向にあります。


2.移転価格調査のフロー


移転価格調査は通常下記の手順で行われます。調査は開始から450暦日以内に完了する必要があるとしていますが、この期間内に解決できない場合、当局から納税者に通知されます。


移転価格調査のフロー
移転価格調査のフロー

 当局の指摘や調整所得額・税額に納税者が同意できない場合、納税者は異議申し立てを提出し、さらなる審査が行われます。それでも合意できない場合は裁判手続きを経て解決することになります。


3.移転価格税制の不順守に対する罰則等


移転価格税制を順守しない場合の罰則等に関しては、通常の税目とは異なる規定が適用され、当局がその順守に注力していることが伺えます。


(a)移転価格文書の提出遅延にかかるペナルティー

移転価格文書はその賦課年度の法人税申告期限と同じ期日までに作成する義務がありますが、その時に税務署に提出する必要はなく、上記の調査フローにあるように、納税者は当局から依頼があれば、依頼日より14日以内に過去6事業年度分の移転価格文書とその関連書類を提出します。提出が遅延した場合、その遅延期間に応じて下記のペナルティーが科されます。他の税目であれば提出期限が延長できる場合もありますが、移転価格文書の提出期限は厳格に取り扱われています。


移転価格文書の提出遅延にかかるペナルティー
移転価格文書の提出遅延にかかるペナルティー

(b)調査における追加所得・追徴税額に対するペナルティー

移転価格調査において、追加所得または追徴税額が発生した場合、賦課年度によりペナルティーが下記のとおり課税されます。法人税の場合、繰越欠損金があれば税務調査により追加所得が生じても追加税額は発生しませんが、移転価格の場合、2021年1月以降に開始する賦課年度は追加所得に対してペナルティーが科されます。


2021 年1月1日より前に開始する賦課年度
2021 年1月1日より前に開始する賦課年度

2021年1月1日後に開始する賦課年度
2021年1月1日後に開始する賦課年度

 移転価格調査の件数は増加傾向にあり、調査になるとその準備や当局とのやりとりに莫大な時間と労力を要します。不順守に対するペナルティーは厳格に取り扱われており、追徴課税になる可能性が高い税目でもあります。移転価格文書はすぐには準備できない文書ですので、対応が必要な納税者はその順守を徹底する必要があります。

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