昨年発表された、マレーシアの5ヶ年計画「第12次マレーシア計画 (RMK-12)」には3つの柱が掲げられており、その一つに「持続可能性の追求」があります。その中で、政府は2050年までにカーボンニュートラル(二酸化炭素(CO2)の排出量と吸収量を均衡させる)を目指すとしており、様々な取り組みに着手しています。今回は、政府が推し進めるグリーン政策を税制の観点から見てみます。
1. グリーン政策の基本方針
2020年におけるマレーシアの二酸化炭素(CO2)の排出量は2.6億トンで、ASEANではインドネシア(5.6億トン)、ベトナム(3.2億トン)に次ぐ排出量となっています。排出量の約8割がエネルギー関連で、中でも化石燃料による発電が主な要因であるとして、RMK-12では、2030年までに二酸化炭素排出量を45%削減すること、今後新たな化石燃料発電所は建設せず再生可能エネルギーに転換していくことを宣言しています。
2. 税制上のインセンティブ
RMK-12では、炭素税について排出権取引スキームとセットでその運用開始に向けたフィージビリティスタディを行う、としていますが、税率など具体的な案はまだ出てきていません。現時点においては、政府は税制上のインセンティブを設けることでグリーン投資を促しており、主なものは下記になります。
a. グリーン投資税額控除(GITA)
グリーン投資にかかる税額控除は、企業活動に必要な資産の購入のうち、政府が指定する環境に配慮した資産(マレーシア環境技術公社(MyHIJAU):https://dir.myhijau.my/directory)を購入した場合、その支出に対し100%相当の投資控除を認めています。企業がビジネスもしくは自社消費のため、再生可能エネルギーや太陽光発電など環境に配慮した設備に切り替える場合、または政府がグリーンビルディングと認定する建物に支出する場合にも認められます。
b. グリーン所得税免除(GITE)
MyHIJAUにサービスプロバイダーとして認定されているグリーンテクノロジーサービスの提供企業に対し、その活動で生じた法定所得の70%を免税にするというものです。サービスプロバイダーには設計、調査、コンサルティング、電気自動車、ビルディング、データセンター、太陽光発電のリースなど、さまざまなセクターが含まれます。
c. 電気自動車(EV)関連
EV関連では、2022年予算案において、個人がEV充電設備を購入もしくはレンタルする場合、最大2,500リンギの所得控除が提案されました。また、間接税では、組み立てEV等を輸入する場合、輸入関税やSST(販売サービス税)の免税措置が与えられます。
3. グリーン政策への対応
政策を遂行する時に、税制面ではアメとムチの両方で進められることが多いですが、炭素税が導入されれば、排出量の多いセクターにまず課税されることになり、それはおそらく中間業者から最終的には消費者に転嫁されることになると思います。現時点では、政府はアメを与えることで企業にグリーン投資を促しており、税制の他にも政府がグリーンテクノロジーファイナンススキーム(GTFS)に60%のファイナンス保証や利息に対し2%のリベートを提供するなどしています。
一方で、2017年に発表された「グリーンテクノロジーマスタープラン(2017~2030年)」では、製造業を含む各セクターにおいて環境配慮に関する目標が設定されています。環境への対応に関する中長期的なロードマップを設定し取り組みを行っていくことが、企業の持続的な経営に必須となってきます。
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