移転価格税制のアップデート_2026年8月現在
- 3 日前
- 読了時間: 4分
更新日:1 日前
内国歳入庁(LHDN)は2026年6~7月に移転価格税制に関するFAQとグループ内融資(Intra
group Loans)に関するガイドラインを公表しました。今回はその中で、日系企業の実務で重要となるポイントをまとめます。
1.移転価格文書作成免除基準の明確化
6月に公表されたガイドライン「Paragraph 1.5 of MTPG 2024:What You Need to Know」では、移転価格文書(ローカルファイル)の作成が免除される場合の判断について明確にしています。移転価格文書は、企業が親会社やグループ会社など関連者との取引がある場合に作成義務がありますが、企業の賦課年度における事業収入額と関連者取引の金額により、通常版(フルスコープ)、簡易版、作成免除に分かれています。

本ガイドラインでは作成免除の判断についていくつか明確化された点がありますが、この中で関連者取引の合計額が100万リンギ未満の判定には売り上げ・費用等の取引額だけではなく、グループ内融資も含めて判断するとしています。例えば、親会社への売り上げが95万リンギ、親会社からの借入金が50万リンギある場合、合計145万リンギとなり文書の作成義務があります。
2.グループ内融資(Intra-group Loans)
7 月に公表されたガイドライン「CONTROLLED FINANCIAL TRANSACTIONS:INTRA-GROUP LOANS(MFTIL)」では、グループ内融資に適用される移転価格上の分析およびコンプライアンス要件を明確にしています。主なポイントは下記のとおりです。
融資の認定・実態分析
グループ内の資金供与は、親子ローン等の貸付・借入金だけではなく、会計上「仮受金」などに計上されているようなものもあります。ガイドラインでは、グループ内の金融取引はその性質と条件を分析し、それが「債務」であるか実質的に「資本」であるかを明確化することを要請しています。
マレーシアでは借入金の支払利息は源泉所得税の課税対象になりますが、「仮受金」等の無金利・無契約の資金が税務当局より借入金と認定されればみなし利息による源泉所得税の追徴や移転価格調整に対するサーチャージ(最大5%)が科されるリスクが存在します。一方で、借入金として計上していても返済義務や利息支払い等の実態がない場合、税務調査で資本とみなされ、支払利息の損金算入が否認されるリスクもあります。
独立企業間金利の決定方法
ガイドラインでは、グループ内融資の支払利息に関し、それが独立企業間金利であることを証明する方法として、独立価格比準法(Comparable Uncontrolled Price)もしくは原価基準法(Cost of Funds)を採用すべきであるとしています。一方で、中小企業等の負担を軽減するため、マレーシアの中央銀行が公表する預金金利もしくは平均貸出金利と比較する簡易法(Simplified Method)も採用可、としています。ただし、クロスボーダーローンの場合には預金金利は適用できず、平均貸出金利については自社資金を原資とすること(転貸ではない)、リンギ建ておよび年間融資残高が5,000万リンギ未満であること等を条件に適用可能です。
3.移転価格に関する証拠書類の保管
移転価格文書の作成が免除になる場合であっても、関連者取引の独立企業間価格は遵守す
べきで、企業はそれを証明する書類を保管する義務があります。ガイドライン「FAQ MALAYSIA TRANSFER PRICING GUIDELINES 2024」によると、証拠書類には契約書、請求書、議事録、取締役会決議、内部分析、ベンチマーク分析などが含まれます。ローン契約書には貸手と借手の情報、融資日、融資額、適用金利および利息に関する方針を含む重要な情報を網羅し、金利の算定に関する資料、簡易法を選択する場合は貸付者が貸付事業を行っていないことの確認、金利が中銀の公式発表に基づいていることの根拠資料を保管します。各書類は 7年間の保存義務があります。
今回公表されたガイドラインは、グループ内融資についてより明確なガイダンスを提供しています。企業はグループ内金融取引について取引内容の特定、商業的根拠の立証、負債と資本の区別、独立企業間金利を決定するための最適な方法の適用など、より厳格な評価を行うことが求められます。


コメント