2022年政府予算案が10月29日に発表されました。今回はその中で税制改正の概要についてまとめます。
過去最高の3,321億リンギ規模が組まれた本予算ですが、その51.6%にあたる1,714億リンギは税収からの歳入を見込んでいます。2021年の実質GDP成長率は3~4%になるとの見通しの中、本予算は2022年の成長率が5.5~6.5%となることを前提としており、税収は今後のコロナの収束と国内およびグローバル経済の回復スピードに左右される側面があります。
本予算案において、税制面では42項目が提案されており、主なものは下記のとおりです。
1. 法人税
コロナの企業業績への影響を考慮し、法人税の計算上、将来の課税所得からの控除を可能にする繰越欠損金の使用期限が現在の7年から10年に延長されます。また法人税の各年の見積税額(予納)の見直しが、その年の業績の見通しに応じてよりフレキシブルに変更できるようになります。一方、大企業で課税所得1億リンギ超の部分に適用する法人税率を現行の24%から33%に一時的に引き上げるなど(2022年度のみ)即時に税収効果が見込める増税策も提案されています。
法人・個人に共通するものとして、国外で稼得した所得(国外源泉所得)のうち、マレーシア国内に送金したものについては2022年より課税されることになります。この措置は、マレーシアの税制の特徴である「国外所得を免税にする」という方針の大きな変更であり、マレーシア人の中では大きな話題となっている印象を受けます。
2. 優遇税制
デジタルやグリーン税制、製造業などが生産力を高める投資への再投資控除など、国が注力する分野への優遇措置のほか、コロナ禍で経済の活性化を図るために設けられた、事業所の改修費用への一括損金算入(30万リンギを上限)措置などが延長されています。
3. 個人所得税
コロナ禍で設けられた国内旅行費用の所得控除や、医療費控除の対象拡大、PC・タブレット購入に対する所得控除など、以前の改正で設けられた措置が延長されています。
4. 間接税
2019年予算案では、納税者に過去の未納税金の自主的申告を促す「特別自主開示プログラム(SVDP)」が所得税に対して行われました。期間中はペナルティが通常より低く設定され一定の成果(税収)を上げました。今回は、同様のプログラムを間接税に対して実施し、期間中はペナルティが50%もしくは100%免除される予定です。また、コロナが落ち着き自動車の販売台数が回復してきていますが、それをさらに後押しすべく、自動車にかかる販売税(SST)の免税措置が延長されています。
5. その他
税務コンプライアンスを強化するため、政府プロジェクトへの入札を行う企業に、その企業が税務コンプライアンスを遵守していることの証明(Tax Compliance Certificate)を提出することを義務化します。また、18歳以上の全マレーシア人に対し納税者登録((Tax Identification Number: TIN)を義務付け、脱税などの分析に活用するとしています。
今回の予算案は、コロナで影響を受けた国民や業界への配慮を継続する一方で、コロナ対策で拡大した財務支出を補うため、課税ベースを広げコンプライアンスを徹底させることでより即効的に税収を上げられるような対策が取られているのが特徴的です。また、歳入・歳出ともにSDGs/ESGへの配慮が随所に見られる内容となっています。
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