マレーシア2026年度予算~外国人に対する政策~
- Michiyo Okubo

- 5 日前
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2026年の政府予算案が10月10日に発表されました。今回はそれに関連し、近年の政府の外国人に対する政策について見ていきます。
1. 第13次マレーシア計画(RMK-13:2026-2030)
本予算案に先駆け7月31日に議会に提出された、2026~2030年の中期国家計画である「第13次マレーシア計画」では、2030年までのGDP成長率について、年4.5~5.5%を目標とする方針を掲げています。政府は、2028~2030年までに高所得国入りすることを目指しており、2030年までに一人当たり国民総所得を77,200リンギ(2024年は54,894リンギ)に上昇させると設定しています。
高所得国入りを目指すため、予算案ではマレーシア人が高収入を得ることができる労働市場へのアクセス強化に注力すること、教育改革の推進、若者や女性、高齢者等労働力の裾野を広げること、を具体的にあげています。同時に、外国人労働者数を労働力人口の10%に抑制する目標を掲げ、2035年までにはこれを5%にするとしています。これは既に導入が検討されている人頭税の導入も一翼を担い、最低賃金を定期的に見直すほか、新卒者と半熟練労働者向けに最低賃金を別途設定することも検討しています。
2. 自国民と外国人の区別
予算案においては、物価高に苦慮する国民に対する補助金について、これまでの一律補助金からターゲット層を明確にした制度に移行するとしています。補助金はマレーシア国民の特権であり、外国人や大企業向けではないことを明確にしています。
自国民を優先していく姿勢については、特にコロナ以降、政府が明確化しているところであり、下記のような外国人を対象とした制度の変更や課税の強化がこれまでに導入されています。

本予算案もしくは今後予定されている外国人を対象とした制度の変更は下記のとおりです。

3. 外国人への増税・負担増への対応
日本を含む他国でも、居住外国人に対する制度や課税については強化もしくは自国民とは区別する傾向にあるかと思います。コロナ以前までのマレーシア政府の外国人に対する政策は、ある程度寛容であったとも言えます。外国人のマンパワーに頼らざるを得ない隣国のシンガポールでは、外国人の流入をコントロールしつつ、その雇用に関し税金をより多く徴収することで、国の税収に貢献する政策を採っており、近年のマレーシア政府の外国人に対する動きもシンガポールの戦略にある程度沿った方向性に見えます。
このような政府の外国人に対する戦略は自然の流れとも言えますが、マレーシアでビジネスを行う日系企業を含む外国企業にとっては、駐在員、外国人労働者を雇用することがコストプッシュ要因となり、企業は中長期的に現地化や自動化、もしくは労務費の上昇に耐えうる収益構造の改革を迫られることになります。マレーシアが高所得国入りする頃、この点に対応できていない外国企業は淘汰されるという危機感を持ち、変化に対応する戦略が重要と考えます。




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