Gig Workers Bill 2025 の概要と税務
- Michiyo Okubo

- 9月30日
- 読了時間: 3分
在宅勤務、ハイブリッドワーク、パートタイマー、副業など、よりフレキシブルな働き方を好む層が拡大している現在、120万人以上のマレーシア人がGig Work(単発業務請負)で生計を立てているといわれています。調査によると、そのうち70%がパートタイム、残りの30%がフルタイムベースとのことですが、現在、ギグワーカーは雇用法関連規制の適用外となっています。彼らのセーフティーネットを保護するための法律「Gig Workers Bill 2025」が国会審議を通過しました。
1.ギグワーカー(単発業務請負)とは
本法案で「ギグワーカー」とは、企業などの事業者と契約を締結し、プラットフォームプロバイダーを通じてサービスを提供し収入を得ているマレーシア人もしくは永住者と定義しています。プラットフォームプロバイダーとは、ギグワーカーのサービスをエンドユーザーにつなぐデジタル仲介システムのことです。これには、e-Hailing やフードデリバリープラットフォームなどの事業が含まれます。すぐに思いつくのはGrab等のドライバーや配送に携わる人ですが、本法案では下記の職種等が含まれるとしています。

本法案は、この「ギグワーカー」として定義づけられる人々に対し、現在法制化されている「被雇用者」でも「業務委託」でもない新しい分類による法的権利を定めています。
2.本法案のポイント
本法案ではサービスを利用する事業者とギグワーカーとの書面(またはデジタルツールを利用した)によるサービス契約の締結を義務化しています。法案の主なポイントは下記のとおりです。

本法案ではギグワーカーに対し、最低賃金保護を強調していますが、現行の最低賃金法がギグワーカーに適用されるかどうかは明記されていません。また本法案はマレーシア人もしくは永住者が対象になっており、デジタルノマドビザ(DE Rantau Nomad Pass)等でフリーランスとして滞在する外国人は対象に含まれていません。
3.ギグワーカーの税務上の取り扱い
本法案ではギグワーカーの税務上の取り扱いについては触れられていませんが、雇用契約に該当しないサービス契約を締結するギグワーカーは被雇用者とはみなされず、事業者は雇用者とはみなされないとしています。労災としての SOCSO については事業者が源泉徴収と納付を行うものの、所得税は源泉徴収を行わず、ギグワーカーは原則、事業所得として自ら確定申告による納税を行う義務があります。本法案により、ギグワーカーには被雇用者と同様の一定の保護が提供されるものの、現時点で税務上は独立した請負業者としての地位を維持することになります。
働き方が多様化する中、若い世代を中心によりフレキシブルな勤務形態を好む人が増えてくれば、企業は正社員、パートタイマー、業務委託、ギグワーカーなど異なる契約形態で時代に沿った人材活用を模索していくことになります。労務、税務、社会保障面のそれぞれの要件を理解し、うまく活用できれば、より幅広い人材の活用や人件費の削減など、企業もそのメリットを享受できるのではないかと思います。




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