税務当局は、5月1日に所得税に関する税務調査の指針(Tax Audit Framework 2022)を発表しました。これは、所得税の税務調査に関する指針で、2019年に発行された同指針に置き換わることになります。
1. 税務調査の指針・ペナルティは税目ごとに異なる
税務調査に関する指針は税目ごとに発表され、税目により調査の進め方やペナルティも異なります。具体的には内国歳入庁(LHDN)が、所得税、源泉所得税、移転価格税制に関する指針を発表しており、関税、SST(販売サービス税)は関税局の管轄になります。
所得税に対する税務調査は、脱税や租税回避行為に対して行われる「TAX INVESTIGATION」と定期的な税務調査となる「Tax Audit」があり、今回の指針のアップデートは後者になります。
2. 本指針の概要・改正点
以前の指針では、税務調査によって過少申告等があった場合は追徴税額の100%相当のペナルティが原則科されるとしたうえで、実務的には当局の裁量により45%までのペナルティが科されていました。本指針では、納税者が故意に過少申告をすれば100%のペナルティを科す可能性も残したうえで、納税者の違反履歴により下記のようにペナルティ率を具体的に示しています。
- 最初の違反:15%
- 2回目の違反:30%
- 3回目の違反:45%
違反履歴については、2020年1月1日から2022年4月30日までの各納税者の違反歴を参照し、この期間に違反歴がなければ、最初の違反とみなされます。また、このペナルティは、税法の解釈の相違により修正申告を余儀なくされた場合(Technical adjustment)については科さないとしています。尚、納税者が税務調査の前(調査の通知前)に自主的に修正申告をした場合のペナルティは15%となり、更にそれが申告日から60日以内の修正申告では10%となります。
3. 税務調査について
税務調査は、納税者が税務署に資料を送付して原則税務署内で行われる「机上調査」と、税務調査官が会社等を訪問して行う「実地調査」があります。調査対象期間は通常過去3年分ですが、脱税などが発見された場合は5年に遡り、悪質な場合は更に遡る可能性もあるとしています。
税務調査で修正事項があり、税務署が提案した修正額に同意できない場合は協議が行われます。協議を受け最終追徴税額(更正通知)が発行され、それに同意できないときは不服申し立てを行うことが可能ですが、その場合でも先に追徴税額を納税する必要があります。税務訴訟等不服申し立て以降のファシリティも用意されていますが、傾向としてそのプロセスは長期に及ぶため、費用対効果を見極めながら判断することになるかと思います。
税務申告については、税務コンサルタントに任せているという会社がほとんどかと思いますが、税務コンサルタントは税額の計算に主には関わっており、税務調査になれば会社の財務担当が主に税務調査官とのやり取りや判断を行っていることが実務的には多いかと思います。本指針において、違反歴によりペナルティ率が異なるように変更されましたので、税務調査を受けた場合は、調査官からの指摘事項等を社内で共有し今後の対策を講じていくことが重要です。
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